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地震防災ホームドクター計画

中京圏における地震防災ホームドクター計画

■事業の目的

東日本大震災による東北地域の被災状況は、あらためて自然災害の恐ろしさを示すとともに、社会全体で災害の影響を可能な限り減ずる「減災」の重要性を明らかにしたといえる。東海地域は、東海・東南海・南海地震による広域巨大災害、内陸活断層の地震、さらには台風・豪雨による風水害など、歴史的に自然災害を頻繁に被ってきた。今後も繰り返す大規模災害を軽減するために、地域連携による減災活動の展開が必須である。

「中京圏における地震防災ホームドクター計画」は、このような地域の切実な状況と大学への要望を背景として、大学・市民・行政・マスメディア・企業等の適切な役割分担に基づく緊密な協働により、地域の地震防災力向上にむけた活動を継続的に推進するものである。2001年にスタートし、2002(平成14)年度から地域貢献事業により継続している。大学の研究成果やアイデア、教育力・開発力により「ヒト・コト・モノ」の各側面から継続的に活動することで、社会の信頼感が醸成され、地域をまとめる求心力となり、着実な成果につながってきた。地域の様子を常に見守りながら、災害が起きる前により強く健全なまちをめざす地震防災ホームドクターの10年にわたる活動は、地域の防災文化として定着し、地域防災モデルケースとして国内外で注目されている。

このような流れを受けて次の10年に向けた活動を展開するべく、2010年12月に名古屋大学減災連携研究センターが設置された。その矢先の3月に東日本大震災が発生したことにより、ホームドクター計画の従来からの活動に加えて、被災地の支援や情報収集・分析、東海地域の対策など多岐にわたる活動に関与することとなった。

■事業推進体制

本プロジェクトは、減災連携研究センター、災害対策室、大学院環境学研究科安全・安心学プロジェクトグループなどの教員が中心となり、地震学・土木工学・建築学・地理学・社会学・心理学・医学・教育学など幅広い専門分野が連携している。また学外では愛知県防災局、名古屋市消防局をはじめとして愛知県・名古屋市の防災・建築・教育等部局との連携体制をとるとともに、多数の市民、防災ボランティア・NPO、技術者・教育関係者・マスメディア等の専門家、他大学と連携協働している。

■平成23年度の活動概要

本プロジェクトの基本理念は、様々な立場や組織との連携体制の構築・人材育成・教育啓発(ヒト)をベースとして、防災研究やプロジェクトの推進と成果の普及、活動拠点や環境整備(コト)、さらに活動を支えるシステムや教材の開発(モノ)をすすめ、地域防災の大きな流れをつくることである。

特にヒトの側面に力を入れており、行政、技術者、大学の専門家、マスメディアや教員等の情報媒介者、防災NPOや防災リーダー等の活動推進者など、防災をになうキーパーソンに向けた学びの場や連携協力体制の構築と活動サポートを推進してきた。その実績に基づき、東日本大震災の発生後は、まず大震災情報集約拠点を設置し、続けて一般向けのシンポジウムを連続開催して、被災地の状況、今すべきこと、そして将来の東海地域の災害への備えなどを繰り返し伝えてきた。毎月開催の「防災アカデミー」は、今年度は大震災関連話題のシリーズとして毎月100~150名の参加を集めた。一方、今年度から「げんさいカフェ」も毎月開催し、お茶を飲みながら専門家と気軽に議論できる場(サイエンスカフェ)で、大震災の実像について議論が行われた。

防災を担う人材の育成は、対象ごとに多様なプログラムを整備しつつある。高大連携高校生防災セミナーは、昨年度参加校も含めて30校以上が取り組み、地域防災を担う若者層を育てている。学内では防災に関係する共通教育科目、大学院科目で防災を俯瞰的に扱う内容を設定しており、防災士受験資格の認定なども用意している。さらに一般向けとしては、建築分野の技術者等に向けて、耐震化やまちづくりの勉強会・講習会を継続している。行政・ライフライン等の研究会「名震研」やマスメディア情報交換会「NSL」は10年以上継続し、連携体制の構築に寄与している。さらにこのような多様な層をまとめるため、防災人材交流セミナーを開催した。今後は、あいち防災協働社会推進協議会の枠組みで、さまざまな対象に向けた防災人材育成研修を統一的に実施できる体制を構築中である。またこのようなつながりを活かした防災イベント「防災フェスタ2011in名古屋テレビ塔」も開催された。

これら一連の活動を支える各種の技術開発(防災教材、防災情報システム、観測・実験機器など)と、防災普及啓発を展開する場の設定は継続的に実施している。特に今年度は、東日本大震災の現地調査や資料収集を行い、大震災情報集約拠点(MeDIC)の運営を推進した。東海地域の地域防災に関する統合データベース(地域防災データバンク)の構築、地震時の室内状況体感システムの開発、各種防災教材の作成などの進展があった。

以上の多様な活動を通して、地域の減災にむけた連携体制の構築が継続的に進行する点が重要な成果である。

■報告書

平成23年度報告書(PDF)

10年のあゆみ(PDF)