人は危機的状況に接したとき、客観的にみれば異常なほど楽観的な判断をしてしまう性質があることなどを各種の実験映像を用いて説明し、なぜ逃げ遅れる事態が生じるのかをわかりやすく説明していただきました。 |
今回の出席者は108名でした。 |
広瀬弘忠先生。 |
「人はなぜ逃げ遅れるのか」と言う広瀬教授の著書が防災への参考になったことを聞き受講しました。
人は緊急時にリスク認知度を遅らせる同化性バイアスと非難を遅らせる同調性バイアスがあることを初めて知りました。これは、「横断歩道みんなで渡れば怖くない」と同じ様なものだなと思い聞いていました。また、緊急事態が生じると人は凍りつき症候群となり、解凍させる必要があることも知りました。映画等では、パニックに陥ることが想定されていますが、広瀬教授が「ほとんどパニックに陥ることは無い」と断言されているのが印象的でした。今回の講演を聞いて、私が今後考えなければと思ったのは、情報提供の仕方です。リスク管理技術にも通じることですが、様々な災害事例をより具体的に想定する必要があります。災害事例を想定した場合、認知を遅らせたり非難を遅らせないように、また凍りつき症候群に陥らないような適切な情報提供が必要となると考えます。昨今のマスコミによる情報提供のされ方からでは、日本人全体へ一様な働きかけをしているだけで、各地点に合った報道が不十分な気がしています。災害の程度が同一でない場合の情報提供あり方は、日本と海外とで差が生じているようです。緊急時における情報提供の重要さについて教えて頂きましたが、どの様な内容にすべきかは今後まだ検討する余地があるように感じました。
伊藤 文隆(エンジニア)
「自分の身に危険が及べば、人はすぐに避難行動をとるであろう」と思っていた私にとって、今回の広瀬先生のお話は衝撃的な内容であった。
広瀬先生は具体的な事例や実験映像を使用し、いかに人間は避難行動を起こしにくい生き物であるのかを示された。韓国地下鉄火災において、煙が充満する電車内の乗客が避難行動をとろうとしない様子や、日本のテレビ番組で実験された、部屋中に煙が充満する中、周囲の人が避難行動をとらないことに影響され、誰もすぐに避難行動を起こさない様子は私にとって驚くべき事例であった。
なぜ人は避難行動を起こさないのかについて、広瀬先生は「異常事態を正常の範囲内の出来事と考えてしまう現象が人間には発生する」とおっしゃられた。そして、「異常な状態なのか、正常な状態なのか、逃げるべきなのか、逃げなくても大丈夫なのかの判断は、周囲の人の反応に左右される」ともおっしゃられた。
今回の講演で示された、「逃げない人間の姿」が、災害時に多数の犠牲者を生み出す原因の一つであることは明らかである。今回の講演内容を肝に銘じて、災害時に備えたいと思う。
畠山 和也(名古屋大学文学部地理学専攻4年)