第10回 「間違いだらけの地震防災:学ぶべき本当の教訓と今やらなくてはいけないこと」

講師: 目黒 公郎 (東京大学生産技術研究所教授)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2005年6月28日(火)17:30-19:30

 


 

 

講演者の目黒公郎教授。モットーは「現場を見る」「実践的な研究」「最重要課題からタックル」。
今回は特に愛知防災リーダー会の方に多数出席いただきました。予定時間を30分以上超過しましたが、熱心な質疑応答が続きました。
過去最高を更新する94名の出席者があり、会場は超満員でした。

 

 


セミナーに参加しての感想

最近、地震防災関連の業務に関わっているので、今回の目黒先生の講演を拝聴した。
防災に関しては、災害発生までにどれだけ適切な対策を取っていたかが重要で、 特に地震については、発生した時点で勝負(という表現は適切ではないかも知れな いが)は9割以上は決まっている、という感覚は持っていたが、実際に、兵庫県南 部地震の犠牲者の92%が地震発生後15分以内に亡くなったという解説があり、改め て災害発生 前(平常時)の対策の重要性を認識・実感することができた。
目黒先生が講演の中で触れられていたように、現状では、災害発生後に被災者支 援 や災害調査が行われるばかりで、平常時の対策を積極的に進められるような体制 は整っていないと思う。その平常時の対策の例として目黒先生がご提案されていた、 「行政によるインセンティブ制度(公助)」、「耐震改修実施者を対象とした共済 制度(共助)」、「新しい地震保険制度(自助)」の『目黒の三点セット』は大変 すばらしい案であると感銘を受けた。と同時に、市民の耐震対策に自治体が補助金 を出すことが、かえって悪い方向へ働きうる、ということにも衝撃を受けた。この 『目黒の三点セット』のような対策を実現させるには、地震防災に対して、より多 くの人たち が、防災について関心を持ち、すべきことは何かを正しく理解し、実 現に向けて行動に移すことが重要であると感じた。
また、私個人としては、GIS(地理情報システム)を扱う企業に身を置いている ため、防災についても自社の得意分野の技術の活用に目が行きがちだが、講演の冒 頭で 目黒先生が仰っていた「問題の本質を解決するためには、自分の専門分野の ことだけを考えていてはだめで、最も適した対応策を取ることが重要」、といった 内容の言葉が印象に残った。この考え方を今後の業務にも活かしていきたいと思う。
坂上寛之(株式会社ファルコン)

目黒教授の講演は我々に地震防災の在り方をセンセーショナルに知らしめた。 普段あまりに地震に近いところに身を置くあまり、かえって地震に対して 無感覚になりそうになっていた自分を本講演は現実に引き戻してくれた。 講演の内容は「地震防災は建物の耐震化に尽きる」というものである。 また、現行の耐震補助制度と震災支援金制度の不備を主張している。 これらの問題を打開するには、耐震化を行った者が地震時に恩恵を受ける 耐震補助制度および地震保険制度を全日本規模で整備する事を提案している。 もしこれらが実現し、理想的に実施されれば非常に高い効果を期待できる。 しかし現在政府によって発表されているように、日本は地震大国と言えども 地域によって地震被害の発生頻度や発生規模が異なる。具体的には数千年に 一度の確率で起こる内陸の地震と数十年のうちにはほぼ確実に発生する 日本海溝沿いや南海トラフ沿いの地震の被害想定地域では、自らが生きている うちに被害を受ける可能性が大きく異なると考えられる。この状況下で全日本 規模で一律の対策制度が確実に浸透するのかやや不安を覚えるが、 現在の災害対策制度と比較すると大災害発生時に効力を発揮する制度である ことは間違いないだろう。それをどのように実現すべきか我々自身が 考える時に来ていることを強く認識させられた、刺激的な講演であった。
光井能麻(地震火山・防災研究センター,技術スタッフ)