第20回 「遺跡が語る地震の歴史 -地震考古学への招待-」

講師: 寒川 旭(産業技術総合研究所関西産学官連携センター)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2006年6月19日(月)17:30-19:00



寒川旭先生

参加者は65名でした

オリジナルの漫画が好評でした


セミナーに参加しての感想

私は歴史を科学で解明する研究に興味があり、現在、年代測定を中心とした考 古学研究を行っている。今まで、地震に注目した歴史研究はあまり聞いたこと がなかった。日記に書いてあるとか、火山灰の層が出てくる、といった程度で 考察されることはよくある。また地球惑星科学科に所属しているので、地質年 代のスケールで断層がどこにあったとか、地すべりの痕跡とその埋もれ木の年 代測定という話も時々聞く。しかし、液状化に注目して、古墳時代~近世の歴 史研究の話を聞くのは初めてだった。
寒川先生の研究は、地震の科学的検証だけでなく、歴史的検証(書物や伝承 など)もしっかりなされていてすばらしいと思った。これぞ文理融合だと思う。 お話もわかりやすく、手書きの絵が難しい内容の講演の息抜きになっていて、 あっと言う間の二時間だった。
最後のまとめは、「防災アカデミー」として開催された講演であったので、 東南海地震を警告する内容であった。私は、考古学の授業の一環のつもりで聞 いていたので、「~だから、大きな東南海地震が来るぞ」という話にばかりも っていかれたのは少し違和感を感じた。寒川先生の講演はたいへん面白く、勉 強になった。また時間も、授業にかぶらない良い時間にあったので助かった。 参加できて教養が深まったと思う。
瀧上 舞(理学部地球惑星科学科,4年)

地震考古学って?地震学と考古学を融合させた新しい学問?難しそうだな、 というのが正直な気持ちであった。しかし、寒川先生の講演を聴き始めてす ぐにその気持は吹っ飛んだ。おもしろい!『日本書紀』の天武十三(六八四) 年のところには南海地震の4つの特徴が書いてあった。記録の少ない江戸時代 以前の地震に関しても、遺跡から南海地震、東海・東南海地震が連動して起 きていたのではないかと想像することができる。先生のお話を聞いていて、 防災とは、想像力が豊かでないと無理なのかもしれないと思った。
寒川先生の著書『地震考古学』のあとがきに「遺跡から掘り起こされた過 去の地震跡。たとえ断片的な資料であっても、いつの時代にも変わらない地 震の性質をさぐる糸口になる。地震考古学は、地震の歴史を考えるとともに、 私たちの将来の生活を守る学問分野といえる。」とある。過去が我々に教え てくれている事象をきちんと理解し、今後に役立てていくことの重要さを改 めて感じた。
『防災アカデミー』は寒川先生の講演で20回となった。地震はいつくるの か?今日なのか、明日なのか。先生方の話を聞いていくうちにだんだんわかっ てくるのかと全くの素人である私は思っていた。しかしそれは違った。誰に も断定することはできないし、だから地震について十分に知っておく必要が あるし、準備をしなければいけないが、必要以上に恐れる必要もないのかも しれない。
稲吉直子(災害対策室,秘書)

今回の寒川先生の講義で一番興味を持ったことは、地震という一般的には 理系的な切り口で捉えられている分野をあえて「考古学」という文系的な分 野から捉えていたことだ。例えば寒川先生はある遺跡の地層の中に、南海地 震などの大地震が起きた時に起こる地中の砂が上の地層にくい込んだ痕跡を 発見し、過去の文献と比較していつの地震によるものかを調べている。とき には、文献にのっていない過去の地震を発見できると述べていた。地層を調 べることから、過去の地震における歴史を解明していくことはとても興味深 いことであるし、過去の地震を理解することによって、地震の周期性などを 解明し、将来の地震の予想に役立てていくことができることもとても興味深 いもであった。
他にも寒川先生はある古墳から出てきた時代の違う皿を発見して、その古 墳に盗掘が行われた時代を確認したり、また盗掘後に起きた地震の後の時代 の皿も発見して二回もその古墳に盗掘が行われた事実を解明できたとおっしゃ っていた。こうしたことは地震の予知には直接にはつながらないかもしれな い。だが、過去に誰かがその古墳で盗掘をおこなったという事実を知ること に、なにか男のロマンみたいなものを感じられることができた。
以上のように、寒川先生の研究は普段私が地震の研究としてイメージする 地震の原理や、防災の考え方などの研究とは少し違い、過去にどのような地 震がおこったか、すなわち歴史の中の地震として捉えている研究であること が私にとってすごくおもしろいものであった。このように地震の研究といっ ても、実際には様々なアプローチの仕方があることを知ることができ、今回 の防災アカデミーは大変有意義であった。
村上秀行(名古屋大学,1年)

昔の遺跡を調べることにより地震の歴史と性質がわかるということはあま り聞いたことがなく驚いた。その土地の液状化や噴砂、断層などから地震に 関係するものが出てくるというのもはじめて聞いた。地震による液状化の話 は建築の授業で聞いたことがあったので興味深く聞いた。また、鎌倉時代の 柱が何百年もあとになって地面から現れたというのも驚きだった。過去に起 こった地震を知っておくことで、これからくる地震によって、同じ被害を繰 り返さないようにすることができると知った。
地震は関東と関西にほぼ同時代におこるということだった。江戸時代から の地震年表でもほとんど同時に起こっていた。私も含め多くの人はあまり意 識していないと思う。もし、本当にこのようなことが起こってしまったら、 日本中がパニックになってしまうので、もっと意識を高める必要があると感 じた。
そして地震の周期を考えると、あと数十年のうちに地震がくることは間違 いないとおっしゃっていた。しかし、いつくるかというはっきりした時間は 現時点では誰にもわからないということなので、常日頃から地震がいつきて もおかしくないと心に留めておく必要があると思った。今回初めて地震アカ デミーに参加し初めて聞く話が多く、色々と学ぶ点が多かった。
中瀬好恵(名古屋大学,1年)


名大トピックス(2006年8月号, No.159)に掲載されました。PDFファイル