第21回 「竜巻と台風の話~地上におけるもっとも激しい気象を如何に コンピューターで再現するか~」

講師: 坪木 和久 (名古屋大学地球水循環研究センター・助教授)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2006年7月4日(火)17:30-19:00



坪木和久先生

参加者は76名でした

「手法開発」・「観測」・「シミュレーションによる再現」という三位一体の研究の話が展開されました


セミナーに参加しての感想

局地気象現象の一つ、集中豪雨の生成のメカニズムの解明、及びその予測精度 を向上させることは、防災上きわめて重要であることは、各種防災システムを 管理・運用している者として、また各地で防災活動を行っている者として、痛 切に感じていたところである。
今回CReSSという気象モデルにより、その可能性について 勉強できたことは大変意義深かった。しかしながら、シミュ レーションの初期値として与えられる気象庁(他機関もあるが) の観測データに本来的な誤差があり、さらに近年予算圧縮により 観測体制の縮小が図られようとしているなか、今後のCReSS開発 の精度に影響が出てこないか心配である。
精度の高い観測網の充実と、計算能力の向上、そして気象モ デルの精度の向上などが相まって、局地気象現象の解明が進む。 戦後の気象災害の歴史は、諸般の体制、技術の向上により、い わゆる「大災害」による多くの犠牲者が出ることはなくなった が、近年頻発する集中豪雨による、土砂災害や都市水害により、 被害は一向に軽減されていない。むしろ増加の傾向すらある。 こうしたときにあって、集中豪雨の予測精度向上は喫緊の課題 である。坪木先生には、よりいっそうの気象モデルの精度の向 上にご尽力いただくとともに、防災事業に携わる者としては、 防災事業の推進に逆行するような動きには反対し、よりいっそう 広範な防災活動に邁進する決意である。
植松久芳(NPO法人ウェザーフロンティア東海)

坪木先生の講演は、話に登場する事柄を身近な現象や事象に置き換えるわか りやすい説明であった。
例えば、台風は鉛直方向に厚さ約10km、水平方向に1000km以上という平ぺっ たい構造をしており、坪木先生はCD-ROMにたとえていた。私には台風と宇宙の 銀河系のイメージが重なって見えた。(本当は,バームクーヘンが頭の中をグ ルグル回っていた。)
1999年9月24日に豊橋で発生した竜巻の事例を持ち出し、たった4時間の気象 現象を再現するのに、早いコンピュータを使って数週間が必要であるという話 には大変驚いた。また、経験された現象を再現する前には多くの困難や失敗の 積み重ねがあったことも語られ、研究者としての苦しみや喜びという人間臭い 気持ちも所々にかいまみることができた。まだまだ我々の知識や経験が足りな い証拠である。
教育者としての立場から、現在の大学教育のあり方について、間違った方向 へ進みつつあるのではないかと危惧する意見も示された。現在の大学は教員も 学生も講義に縛られる割合が多くなり、自由な発想や興味に基づいた研究活動 ができなくなりつつあると危機感を募らせているのである。
社会貢献度を測るための評価の必要に迫られ、研究時間を削り、講演会場等 へ研究者が引きずり出される傾向の強くなっている近年、最前線を突き進もう としている研究を停滞・後退させる危機感すら感じた。研究者の時間を浪費し たりしないように私自身も真剣勝負をするつもりで、ひとつひとつの講演会へ 足を運ぶ意識を高める必要があると身の引き締まる思いであった。  講演の最後には、防災という点について気象研究者としての意見が示された。 数値シミュレーションで説明できる現象もあるが、説明できない現象がある。 防災に活かすためには、気象学における研究はまだまだ発展途上にあることが 示された。では,気象災害への対策はどうすればよいのか。それは、ごく当た り前の事をする。「気象情報に細心の注意を払い、安全行動をとる。」
コンピュータの計算により竜巻や台風が再現されると、何がおもしろいのか という話を聞きたかった。純国産で開発を進めているプログラムが全地球の気 象現象にも適用できるのかどうかにも興味があり、今後の研究の進展に期待し たい。
PS.「風呂桶を地球と思ってみる」という宿題はまだやっていません。
仮屋新一(地震火山・防災研究センター,研究支援推進員)


名大トピックス(2006年8月号, No.159)に掲載されました。PDFファイル