第38回 「地域ぐるみで守る! ~防災まちづくり大賞を受賞して~」

講師: 大石 昇司 (札幌市南区澄川地区連合会会長)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2008年4月22日(月)18:00-19:30



札幌市澄川地区における様々な取り組みが紹介され、講演終了後にはたくさんの質問も出ました。

大石昇司さん。

今回の出席者は80名でした。

写真撮影:稲吉直子


セミナーに参加しての感想

大石さんの大空襲での避難、水害の体験から、自助・共助の大切さを十二分に理解と体験をしての 熱い思い、何ごとにも恐れないという信念からとはいえ、暴力団を澄川から追放した住民の団結力、 何ごとも皆の協力で成し遂げたことが基盤となり、地域安心安全町づくりを指揮されてこられたこと は、すごいエネルギッシュな方であると敬意を表します。
30年前から町内会長を経て、澄川地区連合会長として長きの活躍の中から、いろいろな言葉で 我々の力を授けていただいた気がします。

1.対策は危機感の風化しないうちに立てる(賞味期限)
2.組織を眠らせず維持するには、すべての人に役割を持たせる
3.信頼関係は、この指とまれから
4.生きがいとは、世間に必要とされている実感(澄川快援隊)
5.後継者の育成、50年先はみえている(今の中学が60歳過ぎて中核)
6.自主防災などの安心安全活動で隣保協同精神を育てる
7.活動は継続する(継続は力なり)、立ち止まらない 停滞は衰退のはじまり
8.明日に備えながら地域にあった中長期計画

など心に残る言葉で元気をたくさんいただきました。
これらを踏まえて、私もまだ5年目の学区防災安心まちづくり活動へ率先垂範してゆきたい。また いろいろな工夫やアイデアも自分の地域にあった工夫をして取り組みたい。本日は、ありがとうござ いました。
早川澄男(名古屋市東海学区自主防災会長)

何十年も町内会の運営に関わって見えて、様々な問題解決に計画的に取り組んで成果を収められた お話は、個人の能力だけの問題ではないと思いました。勿論だれでも出来ることではありませんが、 ご自身が理想とする形に、向かって取り組まれた経緯など、大変参考になりました。今からでも遅く ない!お手本にさせていただきながら、自分で出来る事から、計画的に取り組む事が大切だと思って おります。自分の地区の10周年記念大会がワンステップアップのきっかけになれる事を願って、楽し く取り組みたいと思います。
間瀬トシ子(安城防災ネット

奈良県では、地域の自主防災・防犯活動を一体的に支援する「安全・安心まちづくり推進課」が 昨年11月に設置されました。奈良県内の市町村や自治会の皆さんに、自主防災・防犯活動に関す る先進事例を紹介すべく、今回初めてアカデミーに参加させていただきました。
防災アカデミーは、毎月開催され、防災ボランティアの方も運営に参画されたすばらしい取り組 みです。また、案内ポスターもうまく作成されていました。
講師の大石さんは、札幌市澄川地区(15300世帯)の連合会長で、防災と防犯の両方を積極的に 取り組んでおられます。50年から100年先を見据えて、組織を眠らせないよう工夫をされてい ます。そのため、戦略的に①ヒト・②モノ・③カネ・④情報のすべて確保されている点などが先進 的です。

1.「ヒト」は、子供からお年寄りまで役割を持たせ、気軽に参加できる「快援隊」を設置。
2.「モノ」は、防災や防犯の資機材をきっちり確保。
3.「カネ」は、資機材等を確保するのに自治会費だけでなく、行政や各種団体から幅広く資金調達。
4.「情報」は、災害時の情報伝達手段として無線機を整備。

楽しみながら訓練・活動を行うことで長続きし、その中で課題を見つけ解決していくことで、 着実に前進されています。大石さんの取り組みは国内でもトップクラスでした。今回ご紹介い ただいた事例を参考にし、奈良県内の自主防犯・防災活動の取り組みが活発になるよう働きか けていきたいと思っています。
最後に、名古屋大学防災アカデミーのさらなる発展、そして、大石会長のご健康とますます のご活躍を祈念します。本アカデミーのご案内をいただいた木村先生に感謝申し上げます。
倉田貴史(奈良県安全・安心まちづくり推進課)

今回の講演は、「地域による防災への取組」を、いかに持続可能なものにするのかに焦点が あてられていた。なかでも興味深かったのは、運動会等の親睦行事と防災活動を関連付ける、 日常的な防犯活動と防災活動を連動させるといった、防災活動と他の活動との有機的な結びつ きが大切さであるという点、そして、その「地域」のさまざまな活動に子どもの役割を作ると いった、次世代への繋がりが大切であるという点である。以上の点からは、もはや防災にとど まらず、あらゆる「地域による○○」について考えさせられた。
お話のなかでは、その「地域」の担い手として、地縁型組織が想定されていた。地縁関係は、 まさに今回のお話が示していたように、住民に「安心」を与えるものである。一方で、時とし て地縁関係は煩わしいがために、そこから「自由」であることを希求する住民も少なくない。 今日、この両者のバランスをとるのは容易ではないだろうが、今回のお話により、世代間に渡 る日常的な実践により、それが不可能ではないことを学んだ。
なお、唐突ではあるが、今回最も驚かせられたのは、13の町内会のエリアからなる澄川地区 連合会は、およそ3万人もの人口を抱える範囲をカバーしている点である。万の単位の人が住む エリアに「安心」をもたらす仕組みを築き得る、地縁関係の積み重ねが持つポテンシャルには ハッとさせられた。
前田洋介(環境学研究科地理学講座 D2)