講師: 水谷 法美 (名古屋大学工学研究科教授)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2008年9月17日(水)18:00-19:30
高潮災害や海岸浸食など、海岸工学の幅広い分野を網羅したもりだくさんの内容でした。 |
水谷法美先生。 |
今回の出席者は84名でした。 |
セミナーに参加しての感想
水谷先生は、画像・映像などによる豊富な事例をもとに、私のような専門でない人間にもわかりやすく 沿岸災害の現象と原理、海岸工学の意義について説明してくださいました。今回、取り上げられた災害は、 高波災害、侵食災害(海岸侵食)、高潮災害、津波災害の4つです。以下、特に印象的だった点について 感想を述べます。
まずは、高波による災害発生について「想定を超えた波の発生頻度が増加している地点がある」「伊勢 湾台風以降40年あまりが経過して施設が老朽化している」ことの2点によって、今後も大きな被害が想 定されるという内容に衝撃を受けました。50年確率・100年確率という過去の観測データをもとに、護岸 工事などで着実にメンテナンスされていると勝手なイメージを持っていたのですが、施設の老朽化などは 盲点であり、高波に対する防災意識向上の必要性を実感しました。
また、人工海岸における陥没についての工学的な解説をうけることができたのも貴重でした。「砂は引っ 張り合う力には弱い」という事実や「埋め立て土砂の吸い出し発生メカニズム」など、「砂浜に穴が空く のは手抜き工事と整備不良のせい?」というステレオタイプだけでは片付けられない海岸整備の難しさを 知ることができました。
さらに、最後に「海岸工学の課題」として、従来の枠組みだけではない学際的なアプローチの重要性を 強調されていたことも印象に残りました。「防災を行うためには、施設を作るだけではなくて、人々の教 育も必要。そのためには異分野の専門家やボランティアなどが協働して取り組んでいかなければならない」 という先生の思想は、名古屋大学スマトラ津波調査団への参加など有言実行を伴っていらっしゃることも あり、たいへん深く心に残りました。
講義中、参加者を飽きさせないように、たくさんの事例写真や動画を用いてくださったり、また最新の シミュレーション結果もところどころに挟むなど、たいへん工夫をされた素晴らしい講演でした。ありが とうございました。
木村 玲欧(名古屋大学災害対策室・助教)