揺れをはかる ―東日本大震災の揺れと被害から考える振動モニタリング技術の将来― |
講師紹介
第68回防災アカデミーは、「揺れをはかる―東日本大震災の揺れと被害から考える振動モニタリング技術の将来―」と題しまして、名古屋大学災害対策室の飛田潤教授が講演いたします。
3月11日、東北地方に未曾有の災害をもたらした東日本大震災の地震の揺れは、どのような特性だったのでしょうか。また、建物はどのように揺れ、それにより建物の損傷や室内の危険性はどのように生じたのでしょうか。
大都市を含む広域の災害で、多数の建物の被害に効果的に対応するために、実際の建物の揺れを適切に記録し、それを利用する「振動モニタリング」の現状と将来の可能性を交えてご説明いたします。
震災後、飛田教授が東北大学で行った調査結果についても、みなさまにお届けできるかと思います。ぜひ多くの方に聴講いただきたいと思います。
講演のようす
飛田教授による講演の様子 | 会場の様子 |
会場内は満席となりました。 | 会場の外にも中継をしました。 参加者は125名でした。 |
参加者の感想
今回は「揺れをはかる」というお話をしていただいた。最初のほうは東北地方太平洋沖地震(東日 本大震災)についての概略と先生が実際に現地に行かれてとった写真を見せていただいた。建物にはそれぞれ揺れやすい周期があるというお話も聞いた。その周 期が地震の周期と一致した時に一番激しい揺れが生じるということを知った。また、現地の写真を見ると倒壊した建物は多くなかったということが分かった。し かし、揺れが生じたことによる棚が落ちてくるといった被害はかなりあった。東北大学での被害状況をみると6階以上の研究室で明らかに被害が大きくそれより 下の被害は少ないという結果になった。これを聞いたとき、やはり建物は上の階のほうが大きく揺れるということが分かり、上の階ほど棚を固定する、高いとこ ろに重いものは置かないなどの対策をとる必要があると考えた。実験室などの防災の教訓としては、危険物を扱う場合極力低層階に置く、重量のある実験台・装 置・ドラフトなどは床と壁にしっかり固定する必要がある、薬品や危険なガスのボンベなどへの対策を考えるといいたことが必要である。東北大学では現に水素 のガスのボンベから水素が漏れている音がしたと話した人もいるらしい。また、避難方法を徹底することが求められてくる。東北大学ではヘルメットを個人用に 配布しており避難訓練も行われていたため適切に避難できた学生も多かったと聞いた。被害を左右するポイントとして書籍がいっぱいの棚など重量がかなりある ものの固定がまず挙げられる。その固定法を見直しそういった被害を最小限に抑えることがもとめられる。また内開きドアなどは部屋の中の本棚などが倒れると 開かなくなる場合があるので十分に注意する必要がある。
今回のお話で一番印象的だったのがライフタイムモニタリングである。これは設計段階から施工段 階、施工後と建物を一生モニタリングし続けるといったものである。これによって建物の損傷度や建物ののどこが弱いのか、揺れに対してどのような周期をもっ て揺れるのかなど様々な面から揺れと建物の関係を考えることができ、構造モデルに反映していきことができると考えられる。今はまだなかなか多くの建物で応 用はきかないと思うが、このように建物をモニタリングしてモデルを考案していくという実験は将来的にも大変役に立つと思うし、地震が来ても被害を最小限に 抑えられる建物を考案できるのではないかと考えた。しかし、自分がまず念頭に置いていることは、いくら建物を丈夫にしても自然災害(地震など)はなくすこ とができないので自然災害と共存していく建物、地震の揺れが来ても壊れない建物ではなく被害を最小限に抑えられる建物をめざし、実験を進めていくべきであ ると考えている。