第73回 名古屋大学防災アカデミー 2011年10月17日(月) 於:環境総合館レクチャーホール

液状化を含む地盤の地震時被害

野 田 利 弘

名古屋大学工学研究科教授


講師紹介

 今回の防災アカデミーは、「液状化を含む地盤の地震時被害」と題しまして、名古屋大学大学院工学研究科・減災連携研究センター教授の野田利弘先生にご講演いただきます。

 野田先生は土質力学・地盤工学がご専門です。土構造物が長い期間の間にどのように変形するか、また地震などによる被害はどのようにして起こるか、それを防ぐにはどのような対策が有効か。詳細な予測計算手法を駆使され、また被害事例などに基づいて研究されています。

 今回の東日本大震災でも、液状化や宅地造成地の地盤被害が多数発生しており、先生は、現地調査に基づいて地盤災害の調査・報告をされています。そのようなご経験に基づき、地盤の災害についてさまざまなお話をいただけるものと思います。皆様のご来場をお待ちしております。


講演のようす

会場の様子 講演される野田先生
会場内は満席となりました。
参加者は159名でした。
用意された説明用の模型に、参加者は熱心に見入っていました。


参加者の感想

 液状化に伴って発生する建物の被害には、重い構造物の転倒や不等沈下、側方流動などがあり、そ れらは当然被災後の使用に影響する。しかし、北海道南西沖地震であったような、中が空洞であるなどの相対的に比重の小さい軽量な地中構造物も、液状化に よって浮き上がってしまう。特に、液状化が広範囲に及ぶと、地中にある上下水道施設の破損は復旧に時間がかかるため、生活に多大な影響を及ぼす。また、水 道管の浮き上がりに加えて管内に土砂が流入すると、水道が全く使えず生活に支障をきたす。

 液状化による被害は、その原因である地震が大きく取り上げられる性質上、どうしても二次災害のような印象があった。しかし、今回の講義を聞いて、一概に二次災害とは言えず、被災後の生活をより圧迫する可能性のある重大な災害であると感じた。

 ここまで液状化の被害が分かっている以上、液状化のしにくい土地に住むこと、また、液状化の防 止対策を打つことは当たり前のように大切だと思う。液状化のしやすさというのは、過去の土地利用を調べて河川流路ではなかったか、埋め立てた土地ではな かったかを調べれば簡単に分かるし、本格的に知りたいのなら地質調査をすればより精密に分かるだろう。液状化を防ぐ対策法も、講義で紹介されたように種々 ある。液状化して転倒してしまいその後使用できなくなることを考えると、イニシャルコストに多く投資した方が賢明であると思う。

 最近で言うと、東北地方太平洋沖地震でも、ニュージーランドでの地震でも液状化被害は報告されている。土地の適切な選択と対策が必要だと改めて感じた。

名古屋大学大学院環境学研究科

都市環境学専攻 福和研究室 M1 渡辺莉奈